みなさんこんにちは!
連日の雷を合図に、水を多く含んだあられやみぞれが、びちゃびちゃばきばきと窓に当たる音を聞いて北陸らしい年末を過ごしているキモリです。
当館は年末3日間のみ休館日としています。
しかし、生きもののお世話にお休みはありません。
休館日でも飼育員が交代で出勤し、掃除をしたり、エサを与えたりなど、いつも通りにお世話をします。
唯一いつもと違うのはお客様の姿がないことです。
1年ぶりのお客様がいらっしゃらない物静かな館内で生きものたちを眺めていると・・・
この生きものが目に留まりました。
カマツカという河川の中~下流に生息する淡水魚です。
実はこのカマツカの展示、今年の夏にスタートしたのですが、展示を開始するまでにかなり苦労しました。
まさに2025年でいちばん思い出深い魚です。
今回はその苦労話を少しだけさせていただこうかなと思います。
カマツカを展示している水槽は画像のようなパノラマ水槽で、展示生物を上からのぞき込むように観察することができます。
もともとはニシキゴイを展示していたのですが、せっかくならこの水槽の形状を活かした展示をしようと考えたところ、同じコイの仲間であるカマツカを展示することにしました。
なんでカマツカなのかといいますと・・・
このように砂に潜る習性(潜砂行動)があり、来館者のみなさまにも砂に潜ったカマツカ探しを体験していただきたい!と考えたためです。
それならば早速カマツカを採集しに行こう!と意気揚々と市内の河川に出かけたのですが、ここからが苦労の始まりでした。
私は休日も生物採集をするのが趣味で、市内の河川であればどこにどの種類の魚が生息しいるのかほとんど把握しているつもりです。
市内でカマツカの姿を確認したことがある河川は1つしか無く、網を片手にまっすぐにその河川に向かいました。
これまでに何度か採集に行ったことのある河川で、何度かカマツカを採集したことがあったため、なんとかなるだろうと河川をのぞき込むと・・・
いつもは数10㎝程の水深が2m以上になっていました。
覚えてらっしゃる方も多いかと思いますが、今年の夏は全国的に深刻な水不足でした。
田畑に水をひくために、河口手前にある水門が閉じられ、水深が上昇していたのです。
私は焦りました。なにせ市外でカマツカが生息している河川をほとんど知りません。
しかし、ぜひみなさんにカマツカの潜砂行動をお届けしたいと思っている私は止まり方を知りませんでした。
取り敢えず探しまくるしかないと、市外でカマツカを確認したことのある河川や、カマツカが生息していそうな河川を見て回りましたが、どの河川も稲作の為に水門によって水深が深くなっていたり、逆に河川が枯れてしまうほど水が流れていなかったりと、とても魚を採集できる状態ではありませんでした。
1週間ほどカマツカを探し求め、その姿を確認したこともありましたが、河川が広すぎてうまく採集することが出来ないこともありました。
ほとほと困り果てて、市外に住む採集仲間に相談してみたところ・・・
「少し前にとある河川でたくさんのカマツカを見た。そんなに大きくない河川だから採集もしやすいと思うよ。」と耳寄り情報を教えてくれました。
やはり持つべきは仲間!
早速翌日に車で1時間半ほどの場所にあるある河川に向かいました。
河川をのぞき込んでみると・・・。
上から見ただけでもたくさんのカマツカが泳いでいるではありませんか!
さて、あとはここにいるカマツカたちを少し採集させてもらうだけです。
胴長を着用して川にざぶざぶと入っていくと・・・
たくさん泳いでいたカマツカの姿がほとんど見えなくなってしまいました!
それもそのはず、先ほどご紹介したように、カマツカは敵に見つからないように砂に潜って隠れます。
そのため、上からカマツカを視認して採集するのはとても難しいです。
それではどのように採集するのかというと、網を川底にくっつけて、手で仰ぐように底砂を網に入れます。
そして優しく砂を流していくと、砂の中に隠れていたカマツカが網の中に姿を現すわけです。
これが結構重労働で、川に入っているとはいえ、通気性の悪い胴長を着用していて、さらに上からは真夏の強い日差しを浴びているので本当に暑いです!!!
しっかりと水分補給をして自分の体調を気遣い、砂に潜っているカマツカを傷つけないように足元にも気遣いながら、なんとか20匹程のカマツカを採集することができました。
苦労した分、愛着もひとしおです。
水槽に入ったカマツカが泳ぐ姿や砂に潜る姿は何時間でも見ていることができます。
かれこれ水族館にやってきて半年ほど経過したカマツカたちですが、無事に元気な状態で年末を迎えることが出来ました!
個人的なカマツカの魅力は、保護色である茶と黒の体色の中に混ざるきらきらと光を反射する銀鱗と、エサを探すときに見える真っ白なヒゲです。
一見地味ですが、彼らが自然界で生き抜くための進化が見える美しさがあります。
そんなカマツカたちは「マダイの音と光のファンタジア」を開催しているレクチャーホールのすぐ先で展示しています。
砂に潜って目だけを出している姿や、ヒゲを使ってエサを探して砂ごと吸い込むように摂餌する姿を見れば、みなさんもカマツカの良さが分かっていただけると思います。
来年もカマツカたちと一緒にみなさんのご来館をお待ちしていますので、ぜひ遊びに来てください!
そしてカマツカだけでなく、いろいろな生きものたちの魅力を味わっていただければ幸いです。
それでは改めまして、今年1年ありがとうございました!
来年ものとじま水族館をよろしくお願いいたします!
キモリ













